>> WINAPI入門トップに戻る

プロセス・スレッド間の同期(イベント)

今回はプロセス・スレッド間の同期(イベント)について説明します。

過去二回は排他制御についてやってきましたが、
今回はプロセス・スレッド間で行う同期処理の仕組みを説明します。
イベントという仕組みを使って同期処理を行うのですが、
何かのイベントが発生したときに、シグナル・非シグナル状態を切り替える、というだけの
単純な仕組みです。
排他制御ではありませんので、同時に実行されてしまいます。
何かの動作をした時にシグナル・非シグナルを切り換える、というだけの単純なものです。
ただそれを、スレッドはもちろん、プロセス間でも共有できるというのが大きいですね。

まず、CreateEvent関数を使って、
イベントオブジェクトを作成します。

HANDLE CreateEvent(
LPSECURITY_ATTRIBUTES lpEventAttributes, // セキュリティ記述子
BOOL bManualReset, // リセットのタイプ
BOOL bInitialState, // 初期状態
LPCTSTR lpName // イベントオブジェクトの名前
);

第一引数はNULLを指定するとデフォルト値が入ります。
第二引数はシグナルを非シグナル状態に戻すときに手動でするか(TRUE)自動でするか(FALSE)を指定します。
第三引数は初期のシグナル状態を指定します。TRUEでシグナル状態、FALSEで非シグナル状態を表します。
第四引数はイベントオブジェクトの名前を指定します。
成功すると、イベントオブジェクトのハンドルが返ります。

このイベントオブジェクトハンドルを取得するには、OpenEvent関数を実行します。

HANDLE OpenEvent(
DWORD dwDesiredAccess, // アクセス権
BOOL bInheritHandle, // 継承オプション
LPCTSTR lpName // イベントオブジェクトの名前
);

普通に使うには、
第一引数にEVENT_ALL_ACCESS、
第二引数にFALSE、
第三引数に作成したイベントオブジェクトの名前を指定します。
成功するとイベントオブジェクトのハンドルを返します。

今回は手動で非シグナル状態に戻すので、
CreateEvent関数の第二引数はTRUEの手動に、
第三引数は非シグナル状態で始めるのでFALSEを指定して作成します。

このイベントをシグナル状態にするにはSetEvent関数を使い、
非シグナル状態にするにはResetEvent関数を使います。

BOOL SetEvent(
HANDLE hEvent // イベントオブジェクトのハンドル
);
BOOL ResetEvent(
HANDLE hEvent // イベントオブジェクトのハンドル
);

それぞれイベントオブジェクトのハンドルを指定します。
これらの関数を実行して、スレッド及びプロセス間でシグナル・非シグナルを切り替えるだけです。

以下のコードをご覧下さい。

#include <windows.h>
#include <stdio.h>

#define MSG(m) {\
	MessageBoxA(NULL,m,NULL,MB_OK);}

//ウィンドウハンドル
HWND hwnd;
//インスタンスハンドル
HINSTANCE hinst;

//ウィンドウ横幅
#define WIDTH 500
#define HEIGHT 300
//グローバル変数count
int count;

DWORD WINAPI Thread1(LPVOID *data)
{
	char buf[1000];

	HANDLE h;

	//対象のイベントオブジェクトを取得
	h=OpenEvent(EVENT_ALL_ACCESS,FALSE,"EVENT");
	//シグナル状態になるまで待つ。
	WaitForSingleObject(h,INFINITE);
	//非シグナル状態にする。
	ResetEvent(h);

	while(count<1000){

		//カウントをウィンドウタイトルに表示
		sprintf(buf,"%d",count);
		SetWindowText(hwnd,buf);

		++count;
		Sleep(20);

	}

	ExitThread(0);
}




LRESULT CALLBACK WinProc(HWND hwnd,UINT msg,WPARAM wp,LPARAM lp)
{
static HANDLE th1,sh;

	switch(msg){
		case WM_DESTROY:
			CloseHandle(th1);
			CloseHandle(sh);
			PostQuitMessage(0);
			return 0;
		case WM_CREATE:
			//イベントオブジェクト作成
			sh=CreateEvent(NULL,TRUE,FALSE,"EVENT");
			//スレッドを2個作成
			th1=CreateThread(0,0,(LPTHREAD_START_ROUTINE)Thread1,NULL,0,NULL);

			return 0;
		case WM_LBUTTONDOWN:
			SetEvent(sh);
			return 0;

	}
	return DefWindowProc(hwnd,msg,wp,lp);
}

int WINAPI WinMain(HINSTANCE hInstance,HINSTANCE hPrevInstance,LPSTR lpCmdLine,int nShowCmd)
{
	MSG msg;
	WNDCLASS wc;

	wc.style=CS_HREDRAW | CS_VREDRAW;
	wc.lpfnWndProc=WinProc;
	wc.cbClsExtra=wc.cbWndExtra=0;
	wc.hInstance=hInstance;
	wc.hCursor=wc.hIcon=NULL;
	wc.hbrBackground=(HBRUSH)GetStockObject(BLACK_BRUSH);
	wc.lpszClassName="test";
	wc.lpszMenuName=NULL;
	
	if(!RegisterClass(&wc)){
		MSG("クラスの登録失敗");
		return -1;
	}

	hwnd=CreateWindowA("test","テストウィンドウ",WS_VISIBLE | WS_CAPTION | WS_SYSMENU | WS_MINIMIZEBOX,
		0,0,400,400,NULL,NULL,hInstance,NULL);

	if(hwnd==NULL){
		MSG("ウィンドウ作成失敗");
		return -1;
	}

	//インスタンスハンドル
	hinst=hInstance;

	//エラーチェック用変数
	int check;

	while(check=GetMessage(&msg,NULL,0,0)){
		if(check==-1){
			break;
		}
		DispatchMessage(&msg);
	}

	//クラス解放
	UnregisterClass("test",hinst);

	return 0;

}

このコードをコピーしてコンパイルし、ウィンドウを二つ立ち上げてください。
どちらかのウィンドウのクライアント領域を左クリックすると、
両方のウィンドウのカウンタが増加し始めます。

最初のCreateEventでは第二引数をTRUEにして非シグナル状態に戻すときは手動でするように設定し、
第三引数をFALSEにしてイベント作成時は非シグナル状態になるようにしています。
そして、WM_LBUTTONDOWNの左クリックのメッセージが発生した際に、
SetEvent関数を実行してシグナル状態にし、WaitForSingleObjectで待機していたプロセスの処理を
再開するようにしています。
排他制御しているわけではないので、同時に実行されます。

以上が、プロセス・スレッド間のイベントによる同期の説明になります。
次回は文字の描画(TextOut)について説明します。


>> 【文字の描画(TextOut)】に進む
>> WINAPI入門トップに戻る