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前回はスレッド間の排他制御を説明しましたが、
今回はプロセス間の排他制御の説明をします。
プロセスというのはプログラムそのものを表す単位のことです。
つまり1つのプログラムには1つだけしかありません。
スレッドというのはそのプロセスの中にいくつか存在するものです。
そのプロセス間での排他制御について説明します。
プロセス間、プロセス間と言っていますが、別にスレッド間でも使える仕組みです。
プロセス間の排他制御にはミューテックスという仕組みがあります。
これはクリティカルセクションとほとんど同じで、ミューテックスオブジェクトを所有しているプロセスが、
独占して処理を実行できる仕組みです。
流れはクリティカルセクションとほぼ同じで、まずオブジェクトを、
CreateMutex関数で作成します。
第一引数はNULLを指定すればデフォルト値が使われます。
第二引数にTRUEをするとそのプロセスが所有権を持ちます。
複数のプロセスでここをTRUEにすると、所有権を複数プロセスに同時に持たせることなってしまうので、
ここはFALSEに設定して最初にどこに所有権を持たせるかはWindowsに委ねます。
第三引数にオブジェクトの名前を指定します。
この名前が、共有するオブジェクト名になります。
つまりこの名前を基に他のプロセスで処理が実行されてないか調べ、排他制御を実現するということです。
この関数を複数のプロセスで実行するということは、
ミューテックスオブジェクトが複数作られるんじゃないの?、と
思う方がいるかもしれませんが、作成時に既に同じ名前で作成されていた場合は、
新規に作成されず、既に作成済みのハンドルを返してくれます。
ですので、必ず同じ名前のミューテックスオブジェクトは一つしか存在しないということになりますね。
関数が成功すると、ミューテックスオブジェクトのハンドルが返ります。
次に、OpenMutex関数を使って、ミューテックスオブジェクトのハンドルを取得します。
普通にしようする場合は、
第一引数はMUTEX_ALL_ACCESS、
第二引数はFALSE、
第三引数は作成したミューテックスオブジェクトの名前を指定します。
成功するとミューテックスオブジェクトのハンドルが返ります。
これでミューテックスオブジェクトのハンドルを取得した後は、
他のプロセスがミューテックスオブジェクトを所有していないか調べ、待機する必要があります。
それには、WaitForSingleObject関数を使います。
第一引数にはミューテックスオブジェクトのハンドル、
第二引数にはタイムアウト時間をミリ秒で指定します。
第二引数にはINFINITEという定数が用意されており、
これを指定すると、該当ハンドルがシグナル状態になるまで待つ、
という状態になります。
シグナル状態になると制御を返します。
ミューテックスオブジェクトが他のプロセスに所有されているときは、他のプロセスは非シグナル状態です。
つまり、所有権を持ったらシグナル状態になるわけです。
所有権を持つまで待つということですね。
一応この関数の戻り値には主要なものとして以下の三つの定数があります。
WAIT_OBJECT_0 シグナル状態になった
WAIT_TIMEOUT タイムアウト時間が経過
WAIT_FAILED 関数が失敗
今回はINFINITEを指定して、シグナル状態になるまで待つので戻り値を調べる必要はありませんが、
ミリ秒を指定した場合はこの戻り値を調べて、それに応じた処理をします。
このWaitForSingleObjectはスレッドやプロセス関連の処理ではミューテックスオブジェクト以外にも
使えるので覚えておくと便利です。
この関数に制御を返されたプロセスは所有権を得たことになりますので続きから処理が実行されます。
処理が終わったら所有権を解放するために、ReleaseMutex関数を使います。
ハンドルを指定するだけです。
解放されたら自動的に所有権が他のプロセスに移ります。
プログラム終了時にはCloseHandle関数で完全に終了させる必要があります。
以上がミューテックスの仕組みを使った排他制御になります。
これらを表したのが以下のコードです。
このコードをコピーしてデバッグを2回実行し、ウィンドウを二つ立ち上げてください。
すると、一つ目のウィンドウタイトルのカウントが1000まで到達してから、
もう一つのウィンドウのタイトルのカウントが増加し始めます。
コードの説明ですが、
WM_CREATEでミューテックスオブジェクトとスレッドを作成してます。
スレッド内では、カウントを増加させウィンドウタイトルに表示してます。
その処理をミューテックスを使って制御していますね?
同時にプロセスを実行したときに、先に所有権を確保したほうが、
カウント増加処理を先に実行します。
先に実行されたプロセスでReleaseMutexが実行されると、
WaitForSingleObject関数の部分で待機していたもう一つのプロセスに所有権が移り、
処理が再開され始める、という流れになっています。
理解できましたでしょうか?
クリティカルセクションとあまり変わりませんよね。
今回の説明は以上です。
次回はプロセス・スレッド間の排他制御(セマフォ)について説明します。
>> 【プロセス・スレッド間の排他制御(セマフォ)】に進む
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プロセス・スレッド間の排他制御(ミューテックス)|
今回はプロセス間の排他制御の説明をします。
プロセスというのはプログラムそのものを表す単位のことです。
つまり1つのプログラムには1つだけしかありません。
スレッドというのはそのプロセスの中にいくつか存在するものです。
そのプロセス間での排他制御について説明します。
プロセス間、プロセス間と言っていますが、別にスレッド間でも使える仕組みです。
プロセス間の排他制御にはミューテックスという仕組みがあります。
これはクリティカルセクションとほとんど同じで、ミューテックスオブジェクトを所有しているプロセスが、
独占して処理を実行できる仕組みです。
流れはクリティカルセクションとほぼ同じで、まずオブジェクトを、
CreateMutex関数で作成します。
HANDLE CreateMutex(
LPSECURITY_ATTRIBUTES lpMutexAttributes, // セキュリティ記述子
BOOL bInitialOwner, // 最初の所有者
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
LPSECURITY_ATTRIBUTES lpMutexAttributes, // セキュリティ記述子
BOOL bInitialOwner, // 最初の所有者
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
第一引数はNULLを指定すればデフォルト値が使われます。
第二引数にTRUEをするとそのプロセスが所有権を持ちます。
複数のプロセスでここをTRUEにすると、所有権を複数プロセスに同時に持たせることなってしまうので、
ここはFALSEに設定して最初にどこに所有権を持たせるかはWindowsに委ねます。
第三引数にオブジェクトの名前を指定します。
この名前が、共有するオブジェクト名になります。
つまりこの名前を基に他のプロセスで処理が実行されてないか調べ、排他制御を実現するということです。
この関数を複数のプロセスで実行するということは、
ミューテックスオブジェクトが複数作られるんじゃないの?、と
思う方がいるかもしれませんが、作成時に既に同じ名前で作成されていた場合は、
新規に作成されず、既に作成済みのハンドルを返してくれます。
ですので、必ず同じ名前のミューテックスオブジェクトは一つしか存在しないということになりますね。
関数が成功すると、ミューテックスオブジェクトのハンドルが返ります。
次に、OpenMutex関数を使って、ミューテックスオブジェクトのハンドルを取得します。
HANDLE OpenMutex(
DWORD dwDesiredAccess, // アクセス権
BOOL bInheritHandle, // 継承オプション
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
DWORD dwDesiredAccess, // アクセス権
BOOL bInheritHandle, // 継承オプション
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
普通にしようする場合は、
第一引数はMUTEX_ALL_ACCESS、
第二引数はFALSE、
第三引数は作成したミューテックスオブジェクトの名前を指定します。
成功するとミューテックスオブジェクトのハンドルが返ります。
これでミューテックスオブジェクトのハンドルを取得した後は、
他のプロセスがミューテックスオブジェクトを所有していないか調べ、待機する必要があります。
それには、WaitForSingleObject関数を使います。
DWORD WaitForSingleObject(
HANDLE hHandle, // オブジェクトのハンドル
DWORD dwMilliseconds // タイムアウト時間
);
HANDLE hHandle, // オブジェクトのハンドル
DWORD dwMilliseconds // タイムアウト時間
);
第一引数にはミューテックスオブジェクトのハンドル、
第二引数にはタイムアウト時間をミリ秒で指定します。
第二引数にはINFINITEという定数が用意されており、
これを指定すると、該当ハンドルがシグナル状態になるまで待つ、
という状態になります。
シグナル状態になると制御を返します。
ミューテックスオブジェクトが他のプロセスに所有されているときは、他のプロセスは非シグナル状態です。
つまり、所有権を持ったらシグナル状態になるわけです。
所有権を持つまで待つということですね。
一応この関数の戻り値には主要なものとして以下の三つの定数があります。
WAIT_OBJECT_0 シグナル状態になった
WAIT_TIMEOUT タイムアウト時間が経過
WAIT_FAILED 関数が失敗
今回はINFINITEを指定して、シグナル状態になるまで待つので戻り値を調べる必要はありませんが、
ミリ秒を指定した場合はこの戻り値を調べて、それに応じた処理をします。
このWaitForSingleObjectはスレッドやプロセス関連の処理ではミューテックスオブジェクト以外にも
使えるので覚えておくと便利です。
この関数に制御を返されたプロセスは所有権を得たことになりますので続きから処理が実行されます。
処理が終わったら所有権を解放するために、ReleaseMutex関数を使います。
BOOL ReleaseMutex(
HANDLE hMutex // ミューテックスオブジェクトのハンドル
);
HANDLE hMutex // ミューテックスオブジェクトのハンドル
);
ハンドルを指定するだけです。
解放されたら自動的に所有権が他のプロセスに移ります。
プログラム終了時にはCloseHandle関数で完全に終了させる必要があります。
以上がミューテックスの仕組みを使った排他制御になります。
これらを表したのが以下のコードです。
#include <windows.h>
#include <stdio.h>
#define MSG(m) {\
MessageBoxA(NULL,m,NULL,MB_OK);}
//ウィンドウハンドル
HWND hwnd;
//インスタンスハンドル
HINSTANCE hinst;
//ウィンドウ横幅
#define WIDTH 500
#define HEIGHT 300
//グローバル変数count
int count;
DWORD WINAPI Thread1(LPVOID *data)
{
char buf[1000];
HANDLE h;
//対象のオブジェクトを取得
h=OpenMutex(MUTEX_ALL_ACCESS,FALSE,"MUTEX");
//シグナル状態になるまで待つ。
WaitForSingleObject(h,INFINITE);
while(count<1000){
//カウントをウィンドウタイトルに表示
sprintf(buf,"%d",count);
SetWindowText(hwnd,buf);
++count;
Sleep(10);
}
//処理が終わったので解放して他のプロセスへ所有権を移す
ReleaseMutex(h);
ExitThread(0);
}
LRESULT CALLBACK WinProc(HWND hwnd,UINT msg,WPARAM wp,LPARAM lp)
{
static HANDLE th1,mutexh;
switch(msg){
case WM_DESTROY:
CloseHandle(th1);
CloseHandle(mutexh);
PostQuitMessage(0);
return 0;
case WM_CREATE:
//ミューテックスオブジェクトを作成
mutexh=CreateMutex(NULL,FALSE,"MUTEX");
//スレッドを2個作成
th1=CreateThread(0,0,(LPTHREAD_START_ROUTINE)Thread1,NULL,0,NULL);
return 0;
}
return DefWindowProc(hwnd,msg,wp,lp);
}
int WINAPI WinMain(HINSTANCE hInstance,HINSTANCE hPrevInstance,LPSTR lpCmdLine,int nShowCmd)
{
MSG msg;
WNDCLASS wc;
wc.style=CS_HREDRAW | CS_VREDRAW;
wc.lpfnWndProc=WinProc;
wc.cbClsExtra=wc.cbWndExtra=0;
wc.hInstance=hInstance;
wc.hCursor=wc.hIcon=NULL;
wc.hbrBackground=(HBRUSH)GetStockObject(BLACK_BRUSH);
wc.lpszClassName="test";
wc.lpszMenuName=NULL;
if(!RegisterClass(&wc)){
MSG("クラスの登録失敗");
return -1;
}
hwnd=CreateWindowA("test","テストウィンドウ",WS_VISIBLE | WS_CAPTION | WS_SYSMENU | WS_MINIMIZEBOX,
0,0,400,400,NULL,NULL,hInstance,NULL);
if(hwnd==NULL){
MSG("ウィンドウ作成失敗");
return -1;
}
//インスタンスハンドル
hinst=hInstance;
//エラーチェック用変数
int check;
while(check=GetMessage(&msg,NULL,0,0)){
if(check==-1){
break;
}
DispatchMessage(&msg);
}
//クラス解放
UnregisterClass("test",hinst);
return 0;
}
このコードをコピーしてデバッグを2回実行し、ウィンドウを二つ立ち上げてください。
すると、一つ目のウィンドウタイトルのカウントが1000まで到達してから、
もう一つのウィンドウのタイトルのカウントが増加し始めます。
コードの説明ですが、
WM_CREATEでミューテックスオブジェクトとスレッドを作成してます。
スレッド内では、カウントを増加させウィンドウタイトルに表示してます。
その処理をミューテックスを使って制御していますね?
同時にプロセスを実行したときに、先に所有権を確保したほうが、
カウント増加処理を先に実行します。
先に実行されたプロセスでReleaseMutexが実行されると、
WaitForSingleObject関数の部分で待機していたもう一つのプロセスに所有権が移り、
処理が再開され始める、という流れになっています。
理解できましたでしょうか?
クリティカルセクションとあまり変わりませんよね。
今回の説明は以上です。
次回はプロセス・スレッド間の排他制御(セマフォ)について説明します。
>> 【プロセス・スレッド間の排他制御(セマフォ)】に進む
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