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今回はプロセス間の排他制御をセマフォという仕組みを使って、
制御する方法を説明します。
クリティカルセクションやミューテックスでは一つのプロセスやスレッドが処理を独占するだけで、
複数のスレッドやプロセスから同時に処理を行うことは出来ませんでした。
ですが、データや処理内容によっては同時に複数アクセスしたいときもあるかもしれません。
そんな時にはセマフォを使います。
セマフォの仕組みは、セマフォカウンタが0以外のときはシグナル状態で、
0の時に非シグナル状態になります。
セマフォカウンタの初期値はセマフォオブジェクトを作成時に指定します。
各スレッド等で処理が実行されるごとにカウンタが一つずつ減少します。
カウンタの初期値が2だとしたら、処理が2つ実行されると2つ減って0になるので。
3つ目の処理が実行されようとしても待機状態になります。
こうして二つの処理だけを同時に実行する仕組みが作れるというわけです。
セマフォオブジェクトを作成するには、CreateSemaphore関数を使います。
第一引数はNULLを指定すればデフォルト値が使われます。
第二引数はセマフォカウンタの初期値。
第三引数はセマフォカウンタの最大値を設定します。
第四引数はセマフォオブジェクトの名前を指定します。
このオブジェクト名を共有することで、セマフォを使って排他制御が実現されます。
成功すると、セマフォオブジェクトのハンドルが返ります。
次にセマフォオブジェクトのハンドルを取得するには、OpenSemaphore関数を使います。
普通に使う場合は、
第一引数は、SEMAPHORE_ALL_ACCESS、
第二引数はFALSE、
第三引数は作成したセマフォオブジェクトの名前を指定します。
成功するとセマフォオブジェクトのハンドルが返ります。
このハンドルをWaitForSingleObject関数に指定し、
第二引数に前回の講座のミューテックスと同じ用にINFINITEを指定して、
処理が実行できるまで待ちます。
セマフォカウンタが0より大きくなって処理可能になったら、自動的にセマフォカウンタが一つ減ります。
該当の処理が終わったら、セマフォオブジェクトを解放する必要があります。
それにはReleaseSemaphore関数を使います。
第一引数はセマフォオブジェクトのハンドル、
第二引数は増加させるセマフォカウンタの数、
第三引数は増加させるためのセマフォカウンタの数を保存するLONG型のポインタを指定します。
取得する必要がなければNULLでも良いです。
第二引数でどれだけセマフォカウンタを増やすかを指定しますが、
増やすことによって0じゃなくなるのでシグナル状態になるというわけです。
これによって他のプロセスが処理できるようになるわけですね。
ここに指定する値は、CreateSemaphoreで指定した最大セマフォカウントを超えると
エラーになるので注意して下さい。
プログラムの終了時には、作成したセマフォオブジェクトをCloseHandle関数で完全に破棄して下さい。
以上がセマフォの仕組みを使った排他制御になります。
それを表現したコードが以下になります。
このコードをコピーしてコンパイルし、
三つ同時に起動させてください。
二つのウィンドウのカウンタだけ増えていきますが、一つのウィンドウだけ待機状態になるはずです。
そして二つのうちのどちらかが終了すれば、三つ目のウィンドウのカウンタが増加し始めます。
これを見るだけでセマフォの仕組みが成り立っているのが理解できると思います。
まず最初にCreateSemaphoreで初期値を2、最大値も2で作成しています。
つまり同時に2つのプロセスまで同時に処理することが出来るということです。
2個プロセスが起動すると、セマフォカウンタが2つ減り、0になります。
0になると非シグナル状態になるので、三つ目のプロセスはシグナル状態になるまで、
WaitForSingeObject関数の位置で待機状態になります。
上記のコードのReleaseSemaphore関数では、第二引数に1を指定しています。
つまり解放時にセマフォカウンタを1増やすということです。
つまりひとつ実行できる枠が増えるということですね。
これで三つ目のプロセスの処理が再開されるというわけです。
セマフォの仕組み理解できましたでしょうか?
今回の説明は以上です。
次回はプロセス・スレッド間の同期(イベント)を説明します。
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プロセス・スレッド間の排他制御(セマフォ)
制御する方法を説明します。
クリティカルセクションやミューテックスでは一つのプロセスやスレッドが処理を独占するだけで、
複数のスレッドやプロセスから同時に処理を行うことは出来ませんでした。
ですが、データや処理内容によっては同時に複数アクセスしたいときもあるかもしれません。
そんな時にはセマフォを使います。
セマフォの仕組みは、セマフォカウンタが0以外のときはシグナル状態で、
0の時に非シグナル状態になります。
セマフォカウンタの初期値はセマフォオブジェクトを作成時に指定します。
各スレッド等で処理が実行されるごとにカウンタが一つずつ減少します。
カウンタの初期値が2だとしたら、処理が2つ実行されると2つ減って0になるので。
3つ目の処理が実行されようとしても待機状態になります。
こうして二つの処理だけを同時に実行する仕組みが作れるというわけです。
セマフォオブジェクトを作成するには、CreateSemaphore関数を使います。
HANDLE CreateSemaphore(
LPSECURITY_ATTRIBUTES lpSemaphoreAttributes, // セキュリティ記述子
LONG lInitialCount, // 初期のカウント
LONG lMaximumCount, // 最大カウント
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
LPSECURITY_ATTRIBUTES lpSemaphoreAttributes, // セキュリティ記述子
LONG lInitialCount, // 初期のカウント
LONG lMaximumCount, // 最大カウント
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
第一引数はNULLを指定すればデフォルト値が使われます。
第二引数はセマフォカウンタの初期値。
第三引数はセマフォカウンタの最大値を設定します。
第四引数はセマフォオブジェクトの名前を指定します。
このオブジェクト名を共有することで、セマフォを使って排他制御が実現されます。
成功すると、セマフォオブジェクトのハンドルが返ります。
次にセマフォオブジェクトのハンドルを取得するには、OpenSemaphore関数を使います。
HANDLE OpenSemaphore(
DWORD dwDesiredAccess, // アクセス権
BOOL bInheritHandle, // 継承オプション
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
DWORD dwDesiredAccess, // アクセス権
BOOL bInheritHandle, // 継承オプション
LPCTSTR lpName // オブジェクトの名前
);
普通に使う場合は、
第一引数は、SEMAPHORE_ALL_ACCESS、
第二引数はFALSE、
第三引数は作成したセマフォオブジェクトの名前を指定します。
成功するとセマフォオブジェクトのハンドルが返ります。
このハンドルをWaitForSingleObject関数に指定し、
第二引数に前回の講座のミューテックスと同じ用にINFINITEを指定して、
処理が実行できるまで待ちます。
セマフォカウンタが0より大きくなって処理可能になったら、自動的にセマフォカウンタが一つ減ります。
該当の処理が終わったら、セマフォオブジェクトを解放する必要があります。
それにはReleaseSemaphore関数を使います。
BOOL ReleaseSemaphore(
HANDLE hSemaphore, // セマフォのハンドル
LONG lReleaseCount, // カウントを増やすべき数
LPLONG lpPreviousCount // それまでのカウント
);
HANDLE hSemaphore, // セマフォのハンドル
LONG lReleaseCount, // カウントを増やすべき数
LPLONG lpPreviousCount // それまでのカウント
);
第一引数はセマフォオブジェクトのハンドル、
第二引数は増加させるセマフォカウンタの数、
第三引数は増加させるためのセマフォカウンタの数を保存するLONG型のポインタを指定します。
取得する必要がなければNULLでも良いです。
第二引数でどれだけセマフォカウンタを増やすかを指定しますが、
増やすことによって0じゃなくなるのでシグナル状態になるというわけです。
これによって他のプロセスが処理できるようになるわけですね。
ここに指定する値は、CreateSemaphoreで指定した最大セマフォカウントを超えると
エラーになるので注意して下さい。
プログラムの終了時には、作成したセマフォオブジェクトをCloseHandle関数で完全に破棄して下さい。
以上がセマフォの仕組みを使った排他制御になります。
それを表現したコードが以下になります。
#include <windows.h> #include <stdio.h> #define MSG(m) {\ MessageBoxA(NULL,m,NULL,MB_OK);} //ウィンドウハンドル HWND hwnd; //インスタンスハンドル HINSTANCE hinst; //ウィンドウ横幅 #define WIDTH 500 #define HEIGHT 300 //グローバル変数count int count; DWORD WINAPI Thread1(LPVOID *data) { char buf[1000]; HANDLE h; //対象のセマフォオブジェクトを取得 h=OpenSemaphore(SEMAPHORE_ALL_ACCESS,FALSE,"SEMAPHORE"); //シグナル状態になるまで待つ。 WaitForSingleObject(h,INFINITE); while(count<1000){ //カウントをウィンドウタイトルに表示 sprintf(buf,"%d",count); SetWindowText(hwnd,buf); ++count; Sleep(20); } //処理が終わったのでセマフォオブジェクトを解放して、カウンタを1増やす。 ReleaseSemaphore(h,1,NULL); ExitThread(0); } LRESULT CALLBACK WinProc(HWND hwnd,UINT msg,WPARAM wp,LPARAM lp) { static HANDLE th1,sh; switch(msg){ case WM_DESTROY: CloseHandle(th1); CloseHandle(sh); PostQuitMessage(0); return 0; case WM_CREATE: //セマフォオブジェクトを作成 sh=CreateSemaphore(NULL,2,2,"SEMAPHORE"); //スレッドを2個作成 th1=CreateThread(0,0,(LPTHREAD_START_ROUTINE)Thread1,NULL,0,NULL); return 0; } return DefWindowProc(hwnd,msg,wp,lp); } int WINAPI WinMain(HINSTANCE hInstance,HINSTANCE hPrevInstance,LPSTR lpCmdLine,int nShowCmd) { MSG msg; WNDCLASS wc; wc.style=CS_HREDRAW | CS_VREDRAW; wc.lpfnWndProc=WinProc; wc.cbClsExtra=wc.cbWndExtra=0; wc.hInstance=hInstance; wc.hCursor=wc.hIcon=NULL; wc.hbrBackground=(HBRUSH)GetStockObject(BLACK_BRUSH); wc.lpszClassName="test"; wc.lpszMenuName=NULL; if(!RegisterClass(&wc)){ MSG("クラスの登録失敗"); return -1; } hwnd=CreateWindowA("test","テストウィンドウ",WS_VISIBLE | WS_CAPTION | WS_SYSMENU | WS_MINIMIZEBOX, 0,0,400,400,NULL,NULL,hInstance,NULL); if(hwnd==NULL){ MSG("ウィンドウ作成失敗"); return -1; } //インスタンスハンドル hinst=hInstance; //エラーチェック用変数 int check; while(check=GetMessage(&msg,NULL,0,0)){ if(check==-1){ break; } DispatchMessage(&msg); } //クラス解放 UnregisterClass("test",hinst); return 0; }
このコードをコピーしてコンパイルし、
三つ同時に起動させてください。
二つのウィンドウのカウンタだけ増えていきますが、一つのウィンドウだけ待機状態になるはずです。
そして二つのうちのどちらかが終了すれば、三つ目のウィンドウのカウンタが増加し始めます。
これを見るだけでセマフォの仕組みが成り立っているのが理解できると思います。
まず最初にCreateSemaphoreで初期値を2、最大値も2で作成しています。
つまり同時に2つのプロセスまで同時に処理することが出来るということです。
2個プロセスが起動すると、セマフォカウンタが2つ減り、0になります。
0になると非シグナル状態になるので、三つ目のプロセスはシグナル状態になるまで、
WaitForSingeObject関数の位置で待機状態になります。
上記のコードのReleaseSemaphore関数では、第二引数に1を指定しています。
つまり解放時にセマフォカウンタを1増やすということです。
つまりひとつ実行できる枠が増えるということですね。
これで三つ目のプロセスの処理が再開されるというわけです。
セマフォの仕組み理解できましたでしょうか?
今回の説明は以上です。
次回はプロセス・スレッド間の同期(イベント)を説明します。
>> 【プロセス・スレッド間の同期(イベント)】に進む
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